子供を心配しない。娘に冷たい父親 (2)

子供を心配しない。娘に冷たい父親 (2)

大地震で被害。それでも娘を心配しなかった父親

東日本大震災の2日後、実家に電話したときのこと。そのときの父の態度が忘れられません。 ...

いきなり父が不機嫌そうな声で「随分、早く電話くれたな(嫌味)。お父さんには、確か娘がいたと思ったが、いなかったようだな、と考えていたところだ」と私に言いました。電話は地震の2日後。遅れたと言えば遅れたのかもしれません。でも、停電で電話が使えなかったのです。

私は、実家から電話があったに違いないと思っていました。しかしこちらは出ない。さぞかし両親は心配してるだろうと案じていたのです。しかしなんのことはない、親の方からの電話はなく、父はただひたすら、娘からの電話を待っていたようでした。

実家は東京です。私は関東圏に住んでいますが、地震の被害があったところでした。実際、長いこと停電でした。断水もしました。東北の被害と比べたら微々たるものだけれど、それでも日常生活に支障が出る被害を受けました。

父は支配的な人で、子供も含め、親戚、知人、同僚、取引先、(友人はいません)、自分の周りすべての人を家来のように扱います。だから、このときのセリフも「いつものこと」と言えばいつものこと。しかし、愛する人の無事を心から心配する気持ちで日本中がいっぱいだったあのとき、よくこんなセリフが言えるな、と本当に嫌になりました。

どんなにひどいことを言う親でも、もしかしたら照れ隠しで、表現が下手なだけで私を愛してくれていて、困ったことがあったときには一番に助けてくれるありがたい存在なのかもしれない、そのときに、親孝行してこなかったことを悔いたくないな・・と思って、縁を切らずにこれまでなんとかやってきた・・。でも本当にこの親とは縁を切ってよさそうだと心底思った出来事となりました。

あれから、何度もこのときの電話のやり取りを思い起こし、私は子供の頃から、いつでもあんな風に、「親には優しくしろ」とは言われても、親から優しくされたことがなかったのではないか、という結論に達しました。「ほめられたことのない子供は、ほめられることに慣れてないから、ほめられることを素直に喜べない」という話を聞いたことがありますが、私の場合には、「優しくされたことがないから、優しくされても素直に喜べない」なのではないかと、気づいたのです。私は、誰かに優しくされると、居心地が悪いような、拒絶したくなるような、複雑な気持ちになって、「大丈夫」と相手の善意を即座に突っぱねてしまったり、目をそむけてしまうのです。「素直じゃない」ということは親からも、ずっと言われてきたし、自分でもそう思っていました。

私は今、少しずつですが、素直になれてきています。自分の本当の声に気づくのは、本当に難しいなと思います。「私には、優しくされる資格などない。だって、親から愛されたことのないような子だもの・・」。それが、私の心の奥底に隠れていた本音だったように思います。それに気づき、気持ちが軽くなりました。夫に、思い切ってこの話をして、心を開くことができました。心を開くことができると、相手の優しい気持ちもスーッと入ってくるものなんだな、と思います。皮肉にも、あの父との電話が、私が変わるきっかけとなりました。


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