「いい家族」だと思い込んでる親。その末路 (2)

父はアルコール依存症でした。お酒を飲んでは家で暴れ、私や母に暴力を振るいました。ひどいことも山ほど言われました。 ...

しかし母は、父に暴力を振るわれても、自分の家族を「いい家族」と言い続けました。「お父さんは、ああ見えて、いい人なの。決して悪い人じゃないの」。私は父からひどいことを言われるたびに、母からそう言われました。確かに父は、お酒を飲んでいないときには、優しい父でした。母のその言葉は、私にとって、「お父さんのことを、嫌いにならないでね」という圧力でしかありませんでした。「お父さんのことを好きでいなくちゃ、お母さんがかわいそうだ」・・私はずっと無理をしてきたと思います。

そしてそんな生い立ちは、確実に、私を蝕んでいました。

私には、友達がいません。できても長続きしません。子供の頃から、大人になった今も。その人のことが好きなのか、嫌いなのか、仲良くしたいと思っているのか、思っていないのか、自分でわからないのです。本当は大嫌いな父親のことを、母に説得されるようにして、嫌いになっちゃいけない、と必死に言い聞かせてきた日々。気が合わない子と無理に仲良くなろうとしようとして、失敗して落ち込んでしまったり、どんなに意地悪されても、嫌いになるのが悪いような気がして、無理して付き合ってしまったりしました。

私は、完全なる「毒親育ち」でした。

私にも、家族に暴力を振るう父が「毒親」だということは、すんなり理解できました。でも、母は？　「お父さんは、本当はいい人なのよ」と、どんなに父から暴力を振るわれても、父のことを悪く言わなかった母は、むしろ「いい人」に思えました。しかし、それは間違えでした。

毒親の特徴のひとつに、「問題を無いことにしようとする」というのがあるのだそうです。まさしく我が家だと思いました。アルコール依存で、暴力を振るう父。その父に問題がないはずありません。しかし、その問題から目を背け、いい人だということにしておきたがった母。そんな母の態度もまた「毒親的」態度なのであり、子供である私に悪影響だったのだと気づきました。

今の私にはわかります。「問題のない家庭などない。問題があるのに、問題がないようなフリをする、それが問題」。いい家族も、悪い家族もない。ありのままの家族であることが何より大事だったのに、と思います。お父さんがお酒を飲み過ぎるのは問題。酔っぱらうと暴力ふるったりするのは問題。そんな問題がうちの家族にはある、ということを認め、家庭内でオープンにし、共有し、解決していこうとするべきだった・・。

酔っぱらうと暴力的になってしまう、という自身の問題を最後の最後まで改めようとしなかった父。そんな父を「根はいい人」と言い続けた母。そんな家族の在り方が、間違っていたことは、父と母の人生の最後に証明されました。

父81歳。家で暴れ出し、母に暴力を振るいました。ストーブや椅子を投げつけ、ガラスを割り、家の中をメチャクチャにし、警察沙汰となり、警官５人にやっと取り押さえられ、救急車でそのまま精神病院に入れられました。母から電話をもらい、実家に向かいました。母は、「怖かった」「殺されるかと思った」と泣いていました。

人は言うでしょう。「認知症なんだよ」と。しかし、これまでも散々家族に暴力を振るってきた父です。「やっぱりやったか」としか私には思えませんでした。母の背中をさすってやりました。母はもう「お父さんは、ああ見えて根はいい人」とは言いませんでした。

母は、父と暮らすことを拒否しています。病院でも暴れるらしく隔離病棟にいます。父はおそらく、精神病院でその生涯を閉じることになるでしょう。私は、母にこう言いたい気分でした。「お母さん、我が家には、お父さんが暴力的だっていう問題が、歴然とあったんだよ。50年以上も前から。お母さんは、それ、認めたくなかったかもしれないけど、確かにあったんだよ」。母には言わなかったけれど。

「根はいい人なの」。そんな言い方しなくちゃいけない人は、決して「いい人」なんかじゃない。母のその言葉に騙されちゃいけなかったと思いました。「私の家族は、いい家族」・・母の言う「いい家族」は、ちっともいい家族なんかじゃない。真実から目を背けても、いい家庭は作れない・・。私は、行きつくところまで行っちゃった父にもあきれ返るけれど、「私の家族は、いい家族」と私をむりくり説得し続けた母にも、人生をメチャクチャにされちゃったな、と思っています。

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