すぐ不機嫌になる母親 (2)

恵まれた環境にいるはずなのに、私はいつも孤独でした。思えば私は、子供の頃から今に至るまで、友達に悩み事を打ち明けたことがありません。悲しいとか、悩んでいるとか、そういう気持ちを幼い頃から否定してきて育っているので、それを意識したり、言葉にすることができないのです。だから人と親密になれません。 ...

大人になって知りました。自分の負の感情や弱みの存在を否定してしまうのは『毒親育ち』の特徴なのだそうです。

私はそのときまで、普通の人たちは、悲しいことや辛いことを受け止めながら生きているということを知りませんでした。生きていれば悲しいことや辛いことも必ずある。それも自分の一部で「あってはいけない」ことではない。私はそれを「あってはいけないこと」だと思い込まされてきたんだな、と気づきました。４０歳を過ぎていました。

「悲しかったら泣いていいんだ」と気づいたときの霧が晴れたような感覚を私は一生忘れないでしょう。生まれて初めて「これが生きてるってことなんだな」と感じられました。不思議なことに、人の悲しみにも自然な形で寄り添えるようになり、人とつながっている感覚を知ることができました。

完璧主義だった母の元で育ち、「一点の曇りもないような私」を演じ続けた４０年でした。母からやっと解放されたとき、私の人生はもう半分終わっていました。毒親の元に生まれてしまったがために、これまで私はどれだけ損をしてきただろう、と思うと親を恨みたくなります。しかし、その歴史もまた私の一部なんだな、と、ありのままを受け入れることを覚え、私は少しラクになりました。

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