甘えさせない父親。その特徴と娘への影響 (2)

父は、いろいろなことを私にしてくれたけれど、自分のしたいことをするだけで、私が頼んだことはしてくれませんでした。 ...

父はよく、駅まで送ってやろう、と言ってくれました。うれしかった。駅まで車でほんの10分くらいだけれど、父とドライブできるのがうれしかったし、送ってやろうと言ってくれたその気持ちがうれしかった。

でも父は「駅まで送って」と私から言うと、送ってくれませんでした。テレビから目を離すことなく、無言で無視したりしました。「送ってくれないの？」とか言うと、ムッとした顔で振り返ったりしました。「お父さんは、疲れてるんだ」とか怖い顔で言われ、はっきり断られることもありました。

気分が乗らないなら仕方ありません。でももし、「よし！送ってやろう」と、娘から頼まれたことを喜ぶような父だったら・・私は、不安や孤独を感じずに済んだだろうと思います。

私は、親に甘えたことがないのだと思います。だから、人に甘えるのも下手だった。それに気づいたのは、なんと45歳の時でした。夫とは、仲のいい夫婦のはずなのに、いつも感じる不安や孤独。その正体が、子供の頃の生い立ちにあることに気づいた私は、自分を変えたいと思いました。

人に甘えるってどういうことなんだろう？と思いました。夫にも聞きました。夫も実は、毒親育ち。夫も親に甘えたことがないからわからない、と言いました。ふたりで笑いました。

ゴキブリが出たとき、これまでは我慢して自分で取ってたけど、夫に頼んでみました。「ホントは自分でできることだけど、たまには人に頼んでやってもらって、うれしいなとか思うこと」。それが甘えるってことなのかな、と思いました。

夫は私に、コーヒー淹れて、と頼むようになりました。ちょっと甘えてみようかな、と思ったそうです。「ホントは、自分でできることも、人にやってもらったらうれしいことってあるよね。やってあげるー！っていう感じが、人を甘えさせてあげるってことなのかな」と思いました。

それに気づいたときの感覚を、私は一生忘れないでしょう。生まれて初めて、私に暖かな人間らしい「血」が通ったような感覚でした。

親に甘えたことのない毒親育ち夫婦の私たち。子供の頃、親に甘えるって大切なことなんだな、とつくづく思います。人間らしい気持ち。相手とつながってる感覚。遅かったけれど、それを知ることができて本当によかったなと思います。

私はもう、不安も孤独も感じなくなりました。長年の生きづらさから解放されました。