実家依存症の妻 (2)

「両親は、結婚前から夫のことが好きではなさそうでした。でも、私には自信があったんです。彼は口べただけど、悪い人じゃない。いつか必ずわかってもらえるって」。夫をこれ以上悪者にしたくないと、親にも気を遣い、実家によく顔を出していたと言います。 ...

「でも実家に帰れば、夫や夫の実家の悪口ばかり」。結婚して少しでも変わった点があると、すかさずそこを突いてきたと言います。「『あなた、変わったわね』とチクリと言われるんです」。親からそう言われると、本当に結婚してどんどんダメな人間になっているのではないかと、自信が持てなくなっていったと言います。

「私たちの価値観で、夫と新しい家庭を築けばそれでよかったんだと思います。でも、実家にはない習慣を作るたびに、幻聴のようにあの声が聞こえてくるんです。『あなた、変わったわね』という母の声が」。

当時を振り返り「私は実家依存症でした」と語るこの人も、今とても穏やかです。「結婚してもずっと私は、親から嫌われたくない、ダメな人間になったと思われたくないと、実家よりの価値観で生きてきました。そしてそれを夫に押し付けていたとも思います」。そのことで喧嘩することも多かったそうです。

夫にすべてを話したのは、結婚11年目のことでした。「もう疲れちゃったんだと思います」。自分たちの価値観で生活したかった。でもそれをすると、親が気に入らない。あんな男と結婚したからだ、ということになる。だから、私は実家の言いなりになっているしかなかったんだ、と。「言い終わってワーワー泣いてしまいました」。

この人は、夫に今、とても感謝していることがあると言います。「夫は、私の実家から自分がよく思われてないことを知っていました。それでも夫は、一度もウチの両親のことを悪くは言いませんでした」。それは、妻の実家の価値観を押し付けられたようなときでも。「夫は、自分はこうしたい。あなたとこういう風に暮らしたい、ということをストレートに言い続けてくれました」。

今は、とても幸せだと言います。「自分の価値観ややり方だけが正しいと思わずに、それを尊重し合える関係が築けてよかったと思います。それが私たちの家庭だ、と今は胸を張れます」。

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