しつこく言う親。子供への影響と対処法 (2)

父は、私にこんなことがあった、あんなことがあった、と話をするのが好きな人でした。いいことならまだしも、言い間違ったことや、勘違いしいていたこと。あのときあぁだったよなぁ・・と。定期的にしていた祖父母との電話。そのびに父は、私にあったことを、洗いざらい祖父母に聞かせていました。親戚の集まりでも、私のしたこと言ったことを、父は面白おかしく披露しました。私は、自分をネタに大笑いしている大人たちの姿が大嫌いでした。 ...

「私のこと、話さないで」と言ったことがないわけじゃない。でもいつもこう言われました。「かわいいから言ってるんだ」と。父にも母にも、そう言われました。私は、「話さないで」と言うことは、自分勝手な気がしてしまいました。私のことをいじめてるわけじゃないんだから、我慢しなくちゃいけないと、幼くして思ってしまいました。どんなに嫌でも、屈辱的でも、恥ずかしくても、耐えていました。

小学校にあがると、父の言動の予測がつくようになりました。私は、自分の言ったことやしたことを、しょっちゅう振り返るようになりました。そして、父のネタにされるようなことを言ったりしていないか、確認するようになりました。そうしていないと心配で不安で仕方ないのです。その中に、父のネタにされそうなことがあると、「言われちゃう」と、早くから憂鬱になっていました。

そのおかしな思考回路は、私の中にすっかり定着していたのだと思います。私にとって、自分の言動を振り返り、間違ったことを言ったりしたりしていないか確認するのは、当たり前のこと。そうしていないと、不安でしょうがない。みんなそうしているんだ、とさえ思っていました。

その思考回路は、大人になった私の中にも、残っていたのだと思います。結婚し、実家を出ても、思い出さなくてもいいようなことが、自分の意志とは関係なく、ポンと頭に浮かんでは、恥ずかしくなったり、落ち込んだりします。何もないのに、勝手にひとり、ひどく落ち込んでいたりする私の様子を見て、夫は心配したし、不可解にも思ったようです。

誰にも言えず、こっそり精神科に行こうかと思いました。でもそんなとき、「毒親」の本を読みました。

そこには、私が経験してきたこととそっくりな話が書いてありました。子供をからかって、恥ずかしい思いをさせることは、親として許されないことだ、とありました。私は生まれて初めて、自分の味方を得た気がしました。そして、子供の立場にある私が「親に悪気はない。私のことがかわいいがゆえだ」と、親に理解を示すことは、親と子供の立場がまるで逆転している状態。典型的な「毒親家庭」なのだと書いてありました。

私は、この「毒親」の本に勇気をもらいました。夫に、なぜ突然ものすごく落ち込んだりすることがあるのか、話をしました。親の悪口を言うみたいで、夫にどう思われるのか心配だったけれど、夫は理解を示し、私の味方になってくれました。

夫に言われました。「嫌だなと思ったら、その場で言えばいいのに、あなたは言わないよね。僕はその場でそれを言うから、尾を引かない。言っちゃったら、ラクになると思うけどなぁ」と。私は確かに、人から嫌なことをされても、内心ムッとしていても、笑ってごまかして、それを外に出さない。相手に悪意がないのなら、許してあげなくちゃいけない、と思ってしまいます。でも本当はすごく嫌。だから、家に帰ってひとりでイライラし、その人と二度と会いたくなくなったりします。そんなときには自分が我慢すべき、と育ってきた私には、思ったことを言うことが自分勝手なことに思えていました。

でも、そのことで、随分損をしてきたな、と思う。自分の本心をしゃべらないから、誰とも仲良くなれない・・。

少しずつ、夫の言っていることが正しいような気がしてきました。まずは夫に、それをしました。「ちょっとでも嫌だなと思ったら、はっきり言うから」と宣言しました。言ってみれば、自分の思っていることが相手にストレートに伝わり、お互い前より理解し合えた気がしました。ひとりでイライラしたり、だまって落ち込んでるようなことがなくなりました。

子供の頃の自分に、今、会えるなら、こう言ってあげたいな、と思います。「しつこく言わないで、って言っていいんだよ。お父さんに、もっともっと怒っていいんだよ」。それは、大人になった自分に言ってあげたい言葉なのかな、とも思います。自分に正直になること。自分の気持ちをごまかさないこと。偽らないこと。その感覚を知ったら、今までが嘘のように、生きづらさから解放されました。

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