きょうだい差別される子供の心理 (2)

きょうだい差別される子供の心理 (2)

「でしゃばるな」。父は、何かにつけ私にそう言いました。兄と父が話をしているところへ、私が加わろうとすると父は言いました。「でしゃばるな」。幼い私は、「こういうの、でしゃばりって言うんだな。やめなくちゃいけないな」と思いました。でも、次の瞬間にはわからなくなります。だって、私が父と話をしているところへ、兄が加わってきても父は、兄に「でしゃばるな」とは言わない。むしろ、うれしそうだったから。なぜ、兄がして怒られないことを、私がして「でしゃばるな」と怒られるのか、私にはわかりませんでした。 ...

そのことについて、父に抗議したことがあります。父は、顔を真っ赤にして怒りました。「それが、でしゃばりだってことだっ!」と言われました。

そんな私には、忘れらない出来事があります。お祭りの日のことでした。私は、兄や兄の友達と、お祭りに行くことにしていました。父がおこずかいをくれました。私はてっきり、兄と私のおこずかいだと思っていました。だから私は、私の目の前で兄に千円札を渡した父に、「お父さん、ありがとう!」と言いました。

父は、すごい剣幕で私に言いました。「でしゃばるな!!」。父は、兄にだけおこずかいをやろうとしていたようでした。それをてっきり「ふたりに」だと勘違いしてしまったことが、ものすごく恥ずかしかった。父が私におこずかいをくれなかったことと、自分のしたその勘違い。ダブルでショックでした。

「私は、やっぱりでしゃばりなんだ」。これまで何度も何度も・・父に指摘されてきた私の「でしゃばり」。父の言っていることが、全面的に正しいとしか思えなくなりました。何度も言われてるのに、でしゃばりが直らないから、父からしつこいくらいそう言われ続け、この期に及んでしか気づけなかった自分が愚かしく、過去の自分がすべて間違っていたような気がしました。

その日を境に、私は、兄と遊ばなくなりました。兄も兄の友達も、本心では、私のことをでしゃばりだと思っていて、本当は「来るなよ」とか言いたいんじゃないか、としか思えなくなりました。何をしても、これはでしゃばりなのかな、と気にやみました。兄は大学まで進学しましたが、「私も」と言ったら、でしゃばりだと言われそうで怖くて言えませんでした。

高校を卒業すると同時に、寮のある会社へ就職し実家を離れました。そして最近、私がされてきたことは「差別」だったのだと、やっと気づきました。

大人になって、自分の子供時代を思い返すとき、「子供って、本当に弱い立場だよな」とつくづく思います。子供は、どんなに親の言っていることが間違っていても、それを正しいこととして信じてしまう。自分には、でしゃばりなところがある。だから、父から嫌われてしまう。父の癇に障るようなことばかりしてしまうから、お父さんを怒らせてしまう・・ひたすら自分を責めてきました。

差別なんて言葉さえ知らない小さい子供の頃から、そんな扱いを受けてきたから、それを「差別」と言うことにも気づけなかったな、と思います。そして、それを差別と言うのだと知ったときには、もう20年もの年月が経っている・・。私は、萎縮する必要なんてちっともなかったと思います。あんな父の元に生まれていなければ、大学にも行けたかもしれないし、もっとやりたいことをし、言いたいことを言い、自分らしく生きられたかもしれません。

「私の人生を返してよ」。ときどき、はらわたが煮えくり返るくらい頭にきて、どうしようもなくなります。

ある人に言われました。「毒親のことを、簡単に許しちゃう人は、自分もいつか、このくらいいいか!って毒親になっちゃうんだよ。自分の親に怒れる人は、人にはそれをしない。それを糧にいい人になれる。だから、怒っていいんだよ」。その言葉に癒されました。


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