娘を溺愛する父親が原因の鬱 (2)

娘を溺愛する父親が原因の鬱 (2)

「母は、私ほど父にかわいがられて育った人はいない、とよく言っていました」。そう語るこの人の父親は、ひとり娘であるこの人を溺愛していたと言います。 ...

「父は、私のことが大好きでした。何でも買ってくれました。私立の学校にも行かせてくれました。父から守られてる、という感覚は確かにありました。でもその一方で、父が怖くてたまりませんでした」。

「私のことが好き過ぎて、父を嫌いになったらいけない気がしました。嫌いになったら、しっぺ返しが待っている感じがして、怖かったです」。子供の頃から、満たされた気がしなかったと言います。「私は、中学生の頃、すでにだったと思います。学校の休み時間、窓の外をボーッと眺めていると落ち着きました。どこか遠くに行きたい、自由になりたい、と思っていました」。

でもそれが父親のせいだとは、思っていなかったというこの人。「私は、誰よりも恵まれた『お嬢さん』でした。みんなそんな目で私を見るし、母も、私ほど愛情を注いでもらっている人はいない、と言っていたので」。それでも満たされない自分は、よっぽど感謝の気持ちに欠けた人間なんだ、と自分を責めていたそうです。

しかし、それが「歪んだ愛情」であるとわかったのは、結婚後のことでした。「大学生のとき、私には、付き合っている人がいました。今の主人です。父は、それを知っていて、私に見合いを強要しました。断ったのに、会うだけ会えと言いました。着飾るつもりなど毛頭ないので普段着で行ったら、ひどく怒られました。父が、彼を気に入ってないことには薄々気づいていたけれど、私は彼と結婚しました」。

結婚後、父親は、彼への敵意をむき出しにしました。「ふたりで実家に帰っても、口も利かず、目も合わせず、ずっとテレビを見てるだけ。父親なんて、そんなものかな、と思いました」。この人は、ちょくちょくふたりで実家に顔を出すようにした、と言います。いつかわかってくれるだろう、と信じて。

「今思えば、私は、ひとりで実家に帰りたくなかったのかもしれません。彼がいないと、父は別人のように上機嫌でよくしゃべりました。そして決まって彼の悪口を言うんです。早く離婚しろよと言われたこともあります。母も笑ってました。そんな母の顔を見ていると、そんなこと言わないでよ、と怒るのが子供じみたことに感じられ、私はだまっているしかありませんでした」。

結婚後、実家に帰るたび、調子を崩し、になったというこの人。がよくなった今、当時を振り返りこう言います。「怒ってよかった、いえ、怒るべきだったと思うんです。彼のこと悪く言わないでって。私も傷つくって。もう帰って来たくなくなっちゃうよって」。でも、言えませんでした。「私が彼の肩を持てば持つほど、父は彼に敵意をむき出しにするだろう、としか思えませんでした」。

長年苦しんだが完治したのは、実家と縁を切ると決めて3年ほど経った頃だったそうです。「結婚して20年経っても、何も変わらない父の態度を見ていてやっと気づいたんです。これは、時間が解決する問題じゃなかったんだって。父も異常なら、それを問題視していない母も異常です。もう諦めた方がいいと思いました」。縁を切る決心をした後、大きな挫折感に見舞われ、がひどくなったそうです。

「諦めるしかない、と思ったら思ったで、次に待っていたのは、自分がダメな人間にしか思えない・・という感覚でした。なぜ自分だけ、実家とうまくやれないんだろう。周囲の友達はみな、うまくやってるのに、と思いました」。

生涯でもっとも苦しい時期だったというあの頃を振り返り、この人は、今、こう言います。「当時は、すべて自分のせいだと思っていました。父が、私を手放したがらないのも、彼の悪口を言うのも、私が父をそうさせているんだとしか思えず、自分のどこがいけなかったんだろうと、そればかり考えていました」。

しかし今は、すっかり元気です。から回復したきっかけは? 「自分は何も悪くない、と思えるようになってからです。最初は、むりくり自分にそう言い聞かせました。でも、何度も言い聞かせているうちに、真実がクッキリ浮き上がってきたみたいな感覚があります。我儘放題な人の我儘をそのままにして、うまくやろうとするなんて到底無理です。そのくらい無理なことに、40年以上、真剣に取り組み続けてしまったんだと思いました。なんてバカだったんだろうと落ち込んだけれど、子供だった私に何ができただろう、私は何も悪くない、とさらに自分にそう言い続けました」。

この人は言います。「溺愛の海に、溺れさせられてしまった」と。「確かに父は、私のことが大好きで、父親として娘を愛しているつもりかもしれません。でも、束縛し続けようとするのは、愛情じゃない。そんな単純なことに気づくのに、何十年もかかってしまいました。自分は親から愛されているはず・・そう信じていたくて、父の愛情が偽物であることに気づけなかった、いえ、その現実を直視することから逃げていたのかもしれないな、と思います」。気付けてよかった・・そう言って、微笑んだ表情は、とても穏やかでした。


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