うつの症状 「人の機嫌を取ってしまう」の原因と治し方 (2)

うつの症状 「人の機嫌を取ってしまう」の原因と治し方 (2)

人のご機嫌を取ってばかりいるうちに、うつになってしまった人がいます。 ...

「私は母の笑った顔を見たことがありません。母は、うつ病だったのかも・・」。そう語るこの人は、幼い頃から、母親の機嫌を取ってばかりいたそうです。「一番最初の記憶は、幼稚園の頃。母は私にこう言ったんです。『お母さんは子供の頃、山の中で誰とも会わずに暮らしたいって思ってたの。あなたもそう思ったことある?』」。

ある時はこう言ったそうです。「お母さんは、おばあちゃん(母親の母親)が嫌いなの。あなたも、私のこと嫌いでしょ?」。小学生になるかならないかの子供が、そんなこと聞かれて、なんと答えられるでしょうか。「でも私は、気づいてしまったんです。母の機嫌を取る方法を」。

山の中で暮らしたいか、と聞かれたら、決まって「私もそう思う」と答えるようになったそうです。「私(母親)のこと好き?」と聞かれれば、好きだよ、と答えたそうです。「母の質問にはいつも、私にこう答えて欲しい、という期待が見え隠れしていました。それに沿わない答えをすると、ひどく落ち込まれたり、イライラされたりします。そんなとき私は、母から嫌われそうで、捨てられそうでひどく不安になりました。だからだと思います。私は、人が自分に何と言って欲しいのかを察知する勘が異常に冴えている子供でした」。

この家庭環境は、この人の学校生活にも暗い影を落としたそうです。「私の人格は、高校生のときに、すでに崩壊していました。誰も私と仲良くしてくれなかったんです。同級生たちからすれば、私は裏切り者。それもそのはずです。私は、ある人に『あの子、嫌な子だよね』と言われれば、そうだね、と答え、別の場所で『私、あの子嫌い』と言われれば、私も、と答える。その場その場で、相手の機嫌を取るようなことばかり言ってしまう。だから誰からも信用されないんです」。

大学でも、会社でも、人間関係の苦労は絶えず、次第に重いうつ症状に悩まされるようになりました。しかし、これがこの人の大きな転機にもなったのです。「私のうつの原因は、人のご機嫌取りばかりしている・・というか、そうしかできないところにありました。そしてその発端は、母親であることにも気づきました」。それを受け入れることは容易ではなかったと言います。「1年以上かかりました。母から言われたことをノートに書き出して、散々泣いて、『あいつ(母親)が悪い』とやっと思えました」。

そのときから、自分を責めるのをやめ、少しラクになったと言います。「私は、なんて自分は嫌な人間なんだろう、と思ってきました。でも私があのとき、母のご機嫌を取っていなかったら、母に死なれたか、ボコボコにされたかです。幼い私には、ああするしかなかった。そして、私はそれ以外の、正常な人間関係を知らずに育ってきてしまったんです。あっちでもこっちでもいい顔をすることで、私は、多くの人を裏切り、傷つけたかもしれない。その人たちからしたら、私は加害者かも。でも一方で、私はあの毒母の被害者なんだ、と気づきました」。

この人の自己改革は、ここから始まりました。「人の機嫌を取ってばかりいるこの性格をなんとか治したいと思いました。いきなり、人に反対意見を言ってみることは、私には怖くて怖くてとてもできませんでした。だから、まずは自分に正直になろうと思いました。その場は、笑って頷くしかできなくても、家に帰って、本当は、私はそうは思わないって言いたかったんだよな、と振り返ることを毎日しました」。「あと、大げさに『そうそう、私もそう思う!』とか言うのをやめました。うんうん・・って頷く程度にすることを心がけました」。

効果はメキメキ現れたそうです。「人と話をしるときに、その場で『私はそうは思わないな』ってポンと反対意見が浮かぶようになりました。なのに頷いてる自分が汚いような気がしてきて・・恐る恐る言ってみました。『・・そうだよね。でも私はね、こう思うの・・』って。今まで味わったことのない爽快感でした」。

変わっていくことで、おしまいになった人間関係もあったそうです。「私が、自分の考えを言うようになったら、誘ってくれなくなった人もいます。そういう人は、私がイエスマンだったから、私と付き合いたかっただけだったんだなと思います。それが頭でわかっていても、実際はホント寂しかった。うつが復活しそうでした。でも、それでも続いてる友達もいる。この人が本当の友達だったんだな、と思うようにしています」。

人のご機嫌を取ってばかりいたのでは、本当の友達はできないんだな、と痛感していると言います。「自分をさらけ出してみて、私のことを好きじゃないと感じる人がいたっていいんだ、と思いました。自分を出すことをしなければ、誰にも自分をわかってもらえない。摩擦を怖がらず、前進しようと今でも心がけています。あれから6年。勇気が必要だったけれど、1歩踏み出してよかったな、と思っています」。

母親とは、その後どうしているのでしょうか。「私は今やっと、自分の言いたいことが言えるようになったところです。まだ怖くなったり、不安になったりすることも時々あります。だから、まだしばらく母には会いません。母は、私のことを、言って欲しいことを言ってくれる便利な相手だと思っています。そういう人とはもう付き合わない、勇気をもってそういう人にしがみつかない、というのも、今の目標なんです」。


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