「親に信用されてない気がする」の対処法 (2)

「親から信用されてない」と感じて育ってきた人がいます。 ...

「母も父も、私を信用してはくれませんでした」。そう語るこの人は、１歳年上のお兄さんとふたり兄弟でした。

「私は勝気な子でした。兄と一緒に遊ぶのが好きで、野球でもゲームでも勉強でも、兄に負けたくなかった。兄は私にとって、大好きなライバルであり、目標でした」。お兄さんも、そんな妹をかわいがってくれていたと言います。「兄は友達と遊ぶとき、私も誘ってくれました。私は、ひとつ年上の男の子たちにまじって遊ぶのが好きでした」。

しかし、親との間にはいい思い出がないと言います。「父も母も、私よりお兄ちゃんのことが好きなんだな、と私は幼心に思っていました」。それはなぜ？

「母は、何か用事を頼むとき、必ず兄を指名しました。私がする、と言ってもまだ無理、とか言われました。私と兄は１歳違いです。今は『まだ無理』でも、１年後には同じ年齢に私もなります。しかしそれは永遠に続きました」。

中学生になり、高校生になり・・それは、解消するどころかひどくなったそうです。「母がテレビを見ながら、これは何だろう？と言ったので、私が〇〇って言うんだよ、と教えてあげました。母は、そんなとき『ふーん』とだけ上の空で言います。そして後で兄に聞き直すんです。兄が同じことを答えると、やっと納得したような顔をします」。自分は信用されてないんだな、としか思えなかったと言います。

自分のしたこと、自分の言ったこと、自分の将来の可能性。信用されたいのに、信用してもらえない。その感覚は、この人の人格形成にも悪影響を及ぼしました。

「私は、思春期以降ボロボロでした。子供の頃から、兄の背中を見ながら育ってきた私は、いつか私も、兄のようになりたい、親から信用されたい、と思い続けていたようなところがあります。でもそれは、裏返せば、自分はまだ兄の域には達してないから、信用されなくて当然なんだ、と思っていたということでもあるんです。私は結局、どこまでいっても、兄のようにはなれませんでした。私には、自分がダメな人間にしか思えませんでした。これ以上、どう頑張れば信用してもられるんだ、という苛立ちと、一生兄のようにはなれない、という絶望。私の10代、20代は、思い出してもそんな気持ちばかりです」。

そう語るこの人も、今は、吹っ切っていると言います。克服できたきっかけは？

「『毒親』という言葉を知ったとき、あっ・・と思いました。ひょっとして・・と。私はずっと、自分が兄より劣っているから、信用されないのだとずっと思ってきました。でも、親にそう思い込まされてきただけなんじゃないか、こういうのを『洗脳』って言うんじゃないか、と思ったんです」。

当時同棲していた彼氏に、打ち明けたそうです。「話を聞いてくれました。真剣に聞いてくれるので、どんどんしゃべってしまいました。最後には、親の悪口大会みたいになって、ワーッと泣いてしまいました」。

話の最後、彼にこう聞いたそうです。「親のこと、悪く言うなんて、最低の人間だよね。私のこと、軽蔑するでしょ、と。彼は、そんなことない、あなたこと信じてるからだと言ってくれました。この人、私のこと、信じてくれてるんだと驚きました。親から信用してもらえなかった私には、人から信用されるということが、どういう感覚なのかも知らなかったんだと思います。そして、やっとわかりました。どんなに嫌な面を見ても、それでも信じられる。これが本当の信頼とか、信用とか言うものなんだなって」。

現在の親、お兄さんとの関係は？　「うーん、あまり実家には帰ってないです。なぜかと言うと・・たとえば、『この人、私のこと、信用してないな』って感じられたとき、その人から離れて、自分のことを信用してくれてる人と仲良くすればそれでいいと思うんです。私の場合には、それが親だったので、なんとかして信用されたいと頑張り過ぎてしまったんですけど、でももし、ウチの親が赤の他人なら？　到底付き合いたいとは思わないです。だから、たとえ相手が親であっても、自分を守るためには、付き合わないことにする方法もアリなんじゃないかな、と思ったんです」。

今でもときどき悪夢を見るそうです。「自分の言っていることを、誰にも信用してもらえなくて不安になったり苛立ったりしている夢です。ひどく落ち込んで目覚めます。でもそんなとき、自分に言い聞かせるんです。人から信用されてない気がするからって落ち込んじゃダメだ、失礼な態度取るなよ！！って言ってやれって。前よりは、少し強くなれたかな。少しずつでいいから、強くなっていきたいです」。

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