うつ病になりやすい人の共通点 「謙虚過ぎる」の改善法 (2)

うつ病になりやすい人の共通点 「謙虚過ぎる」の改善法 (2)

謙虚をやめて、生きることが楽しくなったと言う人がいます。 ...

「謙虚でなければならない。そう思い込んで生きてきました」。そう語るこの人は、子供の頃から母親に、謙虚でいなさい、と言われ続けてきたと言います。

「母は、自慢するようなことを人に一切言わない人でした。何か買い物をして人に羨ましがられても、安物よ、などと言ったりしてました。そして、私のことも。先生とか近所の人からほめられても、ウチの子なんてぜんぜん!とか言ったりしてました」。

これがこの母親の言うところの「謙虚さ」でした。「母が言う謙虚さは、嘘まみれでした。安物よ、とか言いつつ、家の中では、高かったんだから、とか、お金の話ばかりしているような人でした」。さらに・・「人から羨ましがられるようなものを持ってるのに、それを自慢しない自分。そんな『謙虚な自分』に酔いしれていたと思います」。

母親は、これを娘にも強要したと言います。「私が、できたよ!とか、知ってるよ!とか自信満々に言うと、母は、露骨に嫌な顔をしました。謙虚になりなさい、と。私は次第に、できることもできない、と言うようになりました。できると言ったら、嫌味になるような気がしました。知ってることも知らない、と言いました。人の知らないことを知っていたら、自慢していると思われるような気がしました」。

この人は、社会に出て、大きくつまずきました。「できることは、できると言わなければ、仕事を任せてはもらえません。しかし私には、それができませんでした」。

社会人になってまもなく、上司に呼び出され、言われたことがあったそうです。「自分を卑下するようなことを言うな、と言われました。上司の指摘は、当たっていたと思います。でもあの時の私は、卑下じゃない。謙虚なんだよ、私は!! どうして私の良さをわかってくれないんだ、と内心かなり怒っていました」。

こんこんと上司に説教をされ、わかりましたと言ったものの、はらわたは煮えくり返っていたと言います。「自分に自信を持つ? 自己主張ができるようになる? それができれば苦労はないよ! 私がどんな家庭で育ってきたか、知りもしないくせに、と思いました。母親の顔が浮かびました。母親のせいだと気づきました」。

それをきっかけにうつになったというこの人。しかし、それがこの人の大きな転機となりました。

「あの頃の私は、謙虚過ぎでした。できることもできないと言うなんて、謙虚過ぎと言うか、何と言うか・・。私は自分のことを謙虚な人間だと思っていたけれど、まやかしだった気がします」。

今は、できることをできないと言ったり、知ってることを知らないと言ったりするのはやめたと言います。

「最初は勇気がいりました。誰かに怒られたり、嫌われたりするような気がしました。そんなときには、『ここに母はいない。だから、大丈夫だ』って自分に言い聞かせました。自然と気持ちが落ち着きました」。

自分の考えてることや、自分の言ったこと。何が正解で、何が間違っているのか、さっぱりわからない日々が続いたそうです。「正直になろう、とただそれだけを心がけました。人に対して嘘つかないだけでなく、自分の気持ちにも嘘をつかないようにしようと思いました。やりたいのかやりたくないのか、とか、相手の意見に賛成なのか反対なのかとか、自分の気持ちをひとつひとつ確認するようにしました。慣れていないので、最初はひどく疲れましたが、自分の正直な気持ちがすぐわかるようになりました」。

自分を出せるようになり、それにつれて同僚や上司から、少しずつ仕事を回してもらえるようになったことが後押しとなったそうです。「あぁ、これでよかったんだな、と思いました。できるようになってみれば、今の生き方の方が、ずっと自然でラクです」。

あのときの上司は、今はもうこの人の上司ではないものの、仕事でつながりがあるそうです。「謙虚過ぎてた頃の私なら、上司にお礼を言うところなんでしょうけれど・・あなたのおかげです、みたいなのは、もう封印しようと思っています。自分改革をし、うつから立ち直ったのは、私自身です。自分で自分によく頑張った!と言ってあげようと思います。そして、元上司とも、これからも普通に同僚として付き合う、それで十分だと思っています」。

親とはどうしているのでしょうか? 「実家にはもう帰っていません。もしかしたら2度と会わないかもしれないです。ものをハッキリ言う今の私を、母は好きではないようです。何度か実家に帰りましたが、お互いストレスでした。両親とうまくやるには、以前の私に戻るしかないんだな、と痛感させられるようなこともあり・・謙虚な自分を演じ続けてでも親とうまくやっていくのか、今の私のまま生きていくか、悲しいけれど、私にはその二者択一しかありません。そして私は、今の自分を選びました。今の自分の方が自分で好きだし、自然な私だと思います」。


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