「同じように育てたのに」と言う親。その心理と対処法 (2)

「同じように育てたのに」と言う親。その心理と対処法 (2)

そんな苦しい状況から、復活したした人がいます。 ...

「『上の子と、同じように育ててるのよ。なのに下の子は・・』。私は、母がそう言ってるのを何度も耳にしました」。そう語る人がいます。

この人は、4歳年上のお姉さんとふたり姉妹。利発なお姉さんとは対照的に、おとなしい子供だったと言います。「私は子供の頃から、自分なんかいない方がいい、とずっと思っていました」。

母親は、保護者会のたびに、こう言っていたと言います。「私の保護者会に行くのが憂だと。お姉ちゃんの保護者会に行くのは、鼻高々でいいけれど、下の子のは小さくなってなくちゃいけないって。母は、父や姉にそう言っていました。私もバカじゃない。それを耳にすれば、母が私をどんな目で見ているのかわかります。私は、いつも家で、居心地が悪い感じがしていました」。

「上の子と同じように育ててるのに」。これは、この手の親の常套句です。上の子と同じように育てたら、下の子が同じようになると思っているなら、それは親の怠慢です。上の子には上の子の、下の子には下の子の、個性がありニーズ(親に求めているもの)があります。ひとりひとりの子供に向き合わないから「同じように」しか育てられないのです。その証拠に、この人は、ずっとこう思ってきたそうです。

「母も父も、私には興味がないみたいだ、と思っていました。親に文句を言ったこともあります。でもいつも言われるんです。お姉ちゃんと私、同じように、平等に何でもしてあげてるって。なのに、不満を言うのは、我儘だって」。

自分に自信が持てず、ずっと生きづらさを抱えていたというこの人。でも今は、見違えるほど明るくなりました。そのきっかけは?

「ある人に、親の話をしたんです。ちょっと年上の人で、その人も、毒親持ちでした。自分が嫌になるって言ったら、その人が、『そのままでいいんじゃない?』って言ったんです。『あるがまま』『Let it be』だって。そのままでいいはずがない。私は、親から迷惑がられてる。それでいいはずがない、と思いました」。

その意味がわかったのは、1年以上経った後だったと言います。「言われた当初は、この人も私のこと、ちっともわかってくれないな、って思ったけど、その言葉の意味だけはわかりたいような気がして、ずっと考えてました。そして気づいたんです。人は、もがくと辛くなるって」。

こんなんじゃ嫌だ、こんなはずじゃない、ともがきにもがいていたと、この人は、当時を振り返り穏やかに笑います。「私の心の中は、ずっとグチャグチャでした。親から見たら、自分は迷惑な存在なんだろうな、としか思えない。でも親は、お姉ちゃんと同じことをお前にもしてやってきた、って言ってるので、その感じ方が間違ってるのかも、と思ったり。そして、いつか親に自分も認められたい、と思ってる。でもどうすれがいいのかわからない・・」。

いくら考えても答えの出ないことに悩み続け、ある日、思ったそうです。「全部、そのままにしておいたら、どうなるんだろう、と・・。知人が言ってた『そのままでいいんだよ』が、救いの言葉のように思い出されました」。

自分の感じ方があってるのか間違ってるのか、「どっちでもいいや!」と思ったそうです。親が好きになれないことも、「嫌いなら嫌いでいいか。そのうち気が変わるかもしれないし・・」と、深く考えないことにしたそうです。そして自分のことも。「それ以上悩むのをやめました。世の中、どうにもならないこともある! 反省したり、自分に悪いところがあるんじゃないかとか、考えるのはやめて、放置しとこうと思いました」。

当時は朝起きると、今日の私にも朝が来たな、と毎日思っていたそうです。「なんだか怖かったんです。もがくことをやめたら、自分がダメな人間になってしまいそうな気がして。でも朝は、毎日私にやって来ました。おひさまを見ると思うんです。昨日の私にも、今日も私にも、朝が来た。私は何も変わらない。私は大丈夫って」。日が経つにつれ、そのままにしておいても、特に何も問題は起こらないものなんだな、と思えてきたそうです。

「不思議なことに、むしろ前に進めてる気がしました。そのままにしておくことで、今の自分が、客観的に見えるようになったというか・・。私は、姉と同じように育てられたんだから、姉のようにならなくちゃいけないと思い込んでいたように思います。でもそれは、明らかに間違っていました。私の両親は、姉にとっては、いい両親だったかもしれないけれど、私にとってはそうじゃない。でも、いい親に育てられなかったからといって、私がダメな人だってことでもない。今のこの私が私で、そんな私でも何の問題もない。『あるがまま』の意味がなんとなく分かった気がしました」。

自然体でいることを覚え、生きることがラクになったそうです。「同じように育ててるのに・・と言われるたびに、こんな自分じゃダメだ、と追い詰められていたと思います。でも、こんな自分じゃダメだとは、もう思いません。こんな私にも朝は来るし、24時間がある。ご飯が美味しく食べられて、夜眠れる場所があって、それなりに仕事もしてて、友達も少しはいて。それ以上、自分に何を求めようか!と思います」。これが、苦労の末に、たどり着いた幸せの感覚だと、晴れ晴れとした顔でニッコリ笑い、そして最後にこう語ってくれました。「私は、人生の前半で、既に一生分の苦労をし尽くしたはずだから、これからは、おおらかに、のんびり行こうと思ってるんです。今の自分のまま、あるがまま。それが一番だと、私も思えるようになりました」。


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