人の言うことを鵜呑みにする親 子供の鬱、その実態 (2)

人の言うことを鵜呑みにする親 子供の鬱、その実態 (2)

「母の口癖は、『おばあちゃんが、そう言ってたわよ』でした」。そう語るこの人の母親は、自分の母親(この人の祖母)の言うことを鵜呑みにしてばかりだったと言います。 ...

「母はよく私を連れて実家に帰りました。そんなとき祖母と母は、ずっとコソコソヒソヒソ話しをしてました。母はそんなとき、決して明るい顔はしていませんでした。祖母は、意地悪ばあさんみたいな雰囲気の人で、笑った顔を見たことがない。私にも、嫌なことばかり言う人でした」。

しかしそんな母親も、祖母のことが嫌いだったようだ、と言います。「母はよく言っていました。私は、おばあちゃんのことが嫌いで、早く家を出たくて、全寮制の高校へ行ったんだって。私も私で、かなり単純と言うか、お人よしと言うか、人を疑うことを知らないと言うか・・母のことを、おばあちゃんのこと嫌いなのに、ちゃんと会いに行って、おばあちゃんの話もよく聞いて、偉いな、とか思っていました」。

しかし、大人になるにつれ、その祖母のせいで、また、その祖母の言うことを鵜呑みにしていた母親の教育方針によって、随分と不幸な子供時代を送ってきたことに気づいたそうです。「私は、子供の頃から、お花とお習字を習わされていました。はっきり言って嫌いでした。私がやりたかった習い事は、水泳と剣道。体を動かしている方が好きな子供でした」。しかしその好きでもない習い事を、高校生まで続けたと言います。

「母は言いました。おばあちゃんが、一度始めた習い事は、やめずに続けるのが大事だって言ってたと。私は、どんなに嫌でも、投げだしちゃだめなんだとずっと思っていました。それがうまくなるとか、それが好きか、とかではなく、続けることに意味があるのだから、続けようと思って続けました」。

大人になって気づいたそうです。「習い事は、やってみて向いてなければやめていい。好きでもないことに、何百時間も費やしました。祖母と、それを鵜呑みにした母のせいです」。華道を習わされたのは、祖母が華道の師範だったからだったそうです。書道を習わされたのは、「字は体を表す」と言う祖母の教えからきていたそうです。「母は言っていました。おばあちゃんが、字が汚いとダメだと言ってる、と。字は心を表すのだとかなんとか言ってました。私は、字がきれいじゃないと人からダメな人だと思われるのだと思っていました」。

その呪縛が解けたのは、大人になった後のこと。「ちょっと考えればわかる。字が汚い人は、心の汚い人なの? そんなわけない。それに気づかない私もバカだけど、私がバカなら、いい年してそんなこと言ってる祖母はもっとバカ。それを鵜呑みにして、私にまでそれを伝授しようとした母は、あたま空っぽだと思います」。

今は、カラッとそう言い放つこの人も、過去には長く鬱病に苦しんだ時代がありました。 「私は、思春期以降、祖母と、祖母の言いなりになってる母に、傷つき続けました。18歳とのき、第一志望の大学に落ちて、滑り止めの大学にしか合格しなかった私に、母は言いました。おばあちゃんが、ちょうどいい位のところに合格したって喜んでたわよ。女の子は、頭が良すぎると、かわいげがないから、そのくらいでいいって。慰めにも何にもなってないです」。

結婚するときも、横やりを入れたのは祖母と、祖母の発言を鵜呑みにした母親でした。「おばあちゃんが、その人じゃもったいないって言ってた、と母は言いました。私はそのときはじめて、母と祖母に、明確な憤りを感じました。もったいないってどういう意味? 彼に失礼じゃない? と思いました」。

その干渉は、結婚後も続きました。「お中元やお歳暮を、実家に送らないのは、育ちの悪い人と結婚したからだ、みたいなことを言われました。そう言われたら、意地でも送りたくありませんでした。非常識な人と結婚して、私は堕落したと。私にはガッカリだと。おばあちゃんもそう言ってる、と言われました」。

その頃から、重いに悩まされるようになったと言います。しかし、そのから救ってくれたのは、ご主人でした。「私がもっとも傷ついていたのは、彼のことを悪く言われたことでした。でも、それを彼に言えば彼を傷つけることになる。ずっとひとりで抱えてました。でも、がひどくて、彼にもイライラしたりして、いっそ全部言って、を治してしまった方が、いいんじゃないかと思いました。すべて言いました。ごめんね・・と泣きました。彼は、一緒になって怒り、そしてひとりで辛かったでしょ、と言ってくれました」。

から回復した今、過去の苦労も無駄ではなかったと、思えるようになってきたそうです。「私はずっと実家にも帰らず、あんな人たち大嫌いだ、と思っている自分が、子供じみているような気がしていました。でも、最近になって、そうじゃない、と気づいたんです。母の間違えは、おばあちゃんのことが嫌いだったのに、その人の言うことを聞き続けていたことです。嫌いなら嫌いで、距離を置き、違う生き方をすれば、親と違う人になれたのに、嫌いな祖母の言うことを鵜呑みにするだけの生き方しかしてこなかった母は、祖母と同じ年になった今、祖母にそっくりな意地悪ばあさんです」。

「私は、祖母や母と血がつながってるのかと思うと、自分が嫌になることがあります。でも、私が母と違うのは、人の言うことを鵜呑みにはしないこと。親が嫌いなんて・・と白い目で見る人もいるけれど、毒親育ちの人の実情を知らないそんな発言、私には関係ないです。親が嫌いだと思えるから、親と違う自分になれる。親が嫌いだ思うことで、私は、毒親の負の連鎖を断ち切りたいと思っているんです」。


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