【認知症父の入院6】父のせん妄の原因と再発の可能性 (2)

【認知症父の入院6】父のせん妄の原因と再発の可能性 (2)

要介護判定員の人との面談(退院3週間ほど前)で、「母ちゃんが浮気してるんじゃないかと思ってる」と言い、「まだおかしいんじゃないの?」と私たちを凍り付かせた父でしたが、それも見方を変えれば、「いつもの父」なのです。父はとてもおしゃべりな人で、相手の人を喜ばせたり、周囲を盛り上げたりするためなら嘘もいとわないところが昔からありました。 ...

例えば、夫は昔、飲み会の席で父親から「ウチの息子は、弁護士試験を受けたんだけど、落ちたんだ。だから今は会社勤めをしてる」と大嘘をつかれ(法学部卒ですが、弁護士は目指していませんでした)、「おやじとは2度と飲みに行かない」と決めたそうです。私は私で新婚の頃、「ウチの嫁は、子供ができない体なんだ。かわいそうだから、みんな、そのこと、言わないでやってくれ!」と大きな声で言われて参りました。(私たち夫婦に子供はいませんが、子供ができない体だから、というわけではありません。)その場の思い付きで、考えもなくしゃべる。しかも、人の悪口や嫌がることばかり。その点においてはまさしく「天才」。言うまでもなく最大の被害者は母です。「母ちゃんは浮気してる」発言も「またやったか!」なのです。

兄の死を受け入れ始めている父

急性一過性精神病性障害の発症のきっかけとなったと考えられる「お兄さんの死」。母は、入院から1ヵ月半経った1月中旬に、そのことを父に伝えました。「口にするのは怖いような気がするから」と母はそれを手紙にしたため、面会時に「これ読んでみて」と渡したそうです。父は、目を通すと「へーっ」と言い、その手紙を突き返すように母に返しました。そしてまったく違う話を始めたそうです。「お父さんは、完全に壊れちゃってる。お兄さんのこと、興味なさそうだ」と母は言っていました。

しかし違いました。それから約2ヶ月が過ぎた3月中旬(発症から3ヶ月半)、父は母にこう切り出したのです。「12月8日だったよな」と、え?と母が聞き返すと、「兄貴が死んだのは、12月8日だったよな」と。母が渡した手紙を、父はあのときちゃんと読み、その日付まで記憶していました。なぜあのとき無関心な態度を取ったのか・・その答えは明らかだと思いました。入院して1ヵ月半の時点では、まだ、父はお兄さんの死が受け入れられず、本能的にその情報をシャットアウトし、手紙を母に突き返したのだろうと思います。

急性一過性精神病性障害の発症から3ヶ月半。父は、お兄さんの死を受け入れ、母とそれについて普通に会話ができるようになっていました。退院直前の面会では、「兄貴の葬式に行けなかったなぁ。兄貴に怒られるなぁ。化けて出られるかも!」と、手をブラブラさせてちょっとふざけた感じでオバケのポーズを取ったそうです。

近親者を失くした悲しみは、数ヵ月で癒せるものなどではなく、3回忌、7回忌などという言葉あるように、何年もかけて心の整理がなされていくのだろうと思います。だから、今父が、気弱になったりイライラしがちだったとしても、それは病気ではなくある程度普通のことだと私には感じられます。それよりも私は、「お父さん、よくおじさんのお葬式に行けなかったこと、口に出せたな」と思いました。大好きなお兄さんの葬式に行けず、最後のお別れができなかったことは、父にとって相当に悔やまれることに違いありません。それについて、母と普通に話せるようになってきた父の現状からは、再び錯乱して我を失ってしまうようなことはないのではないか、と思えました。

急性一過性精神病性障害。再発の恐れはなし

実際、入院中も、幻覚や睡眠薬といった「急性一過性精神病性障害」の症状を抑えるために出されたのではないかと思われる薬は、最初の1ヵ月だけ。もう3ヶ月もの間出ていません。その病名が示すとおりそれはまさしく「一過性」。私たち夫婦は、父の「急性一過性精神病性障害」は、ほぼ治ったと考えていいのではないかと思いました。そして、再発を恐れて月に1回精神病院に通院させるより、お兄さんを失くして落ち込んだり不安に感じている父に理解を示し、思いやりのある態度を取ることの方が大事なんじゃないかと思いました。デイサービスに行けるように手配し、父に新しい人間関係を築くチャンスを作るのもいいかなと思いました。

そしてもうひとつ。私は母に手紙を書きました。夫に「ふたりから」ということで送ってもらいました。

父のせん妄への対処

「お母さんへ
身近な人を失くして悲しんでいる人を慰めるのに、もっともいいのは、意外なことに思い出話をする、なんだそうです。今度お父さんが、自分からおじさん(父の兄)の話をしてきたら、いい思い出がいっぱいあるね、とか、仲のいい兄弟だったね、とか、お兄さんもいい弟がいて幸せだったと思うよ、とか、おじさんの話をしてはどうでしょうか。悲しませるんじゃないかとついつい避けてしまいがちだけど、そういう話をしながら一緒に悲しんだり、偲んだりすることは何よりの慰めになるそうです。」

母はかなりさばけた人で、父のこの一件について「そんなことくらいで」「あの人は、すぐクヨクヨするところがある」くらいにしか思っていないきらいがありました。大好きなお兄さんが死んでしまって、あそこまで狂っちゃったのにはお母さんも参ったと思うけれど、そのくらい悲しいとか寂しいとか感じることは罪じゃないし、別に悪いことじゃない。お父さんには辛いだろうけど、なんとか乗り越えて欲しいと思うし、それに寄り添ってあげられるのは、同居しているお母さんだよな、と思いました。母に今、この手紙を出さないと後悔するような気がしました。「出過ぎたことを」と叱られても、嫌われてもいいから、母にそう伝えておきたいと思いました。

精神病院に連れていくのは逆効果だと思う

入院していた担当医からは「再発するかもしれないから、S病院(地元の精神病院)に行って主治医を作っておくように」と言われたけれど、入院中も、もう3ヶ月再発はしていないワケだし、父もお兄さんの死を乗り越え始めている。再発するかどうかもわからないのに、それを恐れて精神病院に連れていくようなことは、かえって逆効果になるのではないか・・それが私たち息子夫婦の共通した意見でした。

しかしS精神病院へ父を連れていかないとなると、心配なのは、退院時に渡された「レミニール」(認知症の薬)が3週間で切れる、ということです。父は、入院期間中ずっと「レミニール」を飲んでいます。「レミニールを飲むのをやめるとどうなるんだろう?」「父には、認知症の傾向もあるのか?」。担当医から、その説明も受けられたかった私たちは、その点についても知らべてみることにしました。そして意外なところから、意外なことがわかったのです。

次に続く・・。


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