要介護親を危うく引き取るところでした (2)

夫を息子に丸投げの母

母は、父と再び同居することを頑なに拒んでいました。服を着たまま風呂に入ったり、ゴミ箱に排尿したり、窓を割って外に出ようとしたり。最後には、ハサミやモノサシを振り回し、別人のような目で睨まれ、動物のように唸られ、暴力を振るわれ、相当に怖い思いをしています。母はＰＴＳＤのような状態で、家にいると、心臓が突然バクバクしたりする、とも言っていました。 ...

「もう一緒には暮らしたくない」と言っているのも当然だと思ったし、その母の意志を大切にしなくちゃいけないなと思いました。しかし、母はあまりにも父のことを私たちに丸投げで、私たちはどんどん疲れていきました。

母から父を押し付けられそうになった

母は、夫と別居できるなら、どんな方法でもかまわないようでした。息子夫婦の元に引き取られるのでも、介護施設に入れるのでも。しかし、母は元々消極的で行動力がない。自分で介護施設を探したりしないし、どのくらいお金がかかるのかといった知識もなければ知ろうともしない。そして実際のところお金がない。両親の年金と貯蓄だけで父を介護施設に入れることはできない。私たちが毎月補てんし続けなければならなくなる。それらをすべて丸ごと「何とかして欲しい」と夫に丸投げ状態でした。

私は夫が、電話口で何度も「僕がオヤジを引き取るという選択肢はないんだからね」と母親に言っているのを聞きました。「お母さん、こっちで面倒見てくれとか言ってるんだ・・」とゾッとしました。しかし、母はひとり息子である夫に弱い。息子夫婦に引き取ってもらうことは諦めたようで、母は次第にこう言うようになりました。

「あなたたち（夫と、嫁である私）に迷惑かけないようにと思って、私はひとり必死に頑張ってるんだ」と。「ん？？」と思いました。「私、お義母さんありがとうとでも答えなくちゃいけない？」「お義母さんがガンバってくれてるおかげで、私たちお父さんを引き取らずに済んでいます、とかもっと感謝しなくちゃいけない立場なの？私は？」

当事者意識のない母

「お母さん、無責任だな」と思いました。母には当事者意識がまるでない。父は、母の同居する唯一の家族です。まずは自分でなんとかしようとなくちゃいけない問題で、それでもできないことがたくさんあるから、私たち息子夫婦が最大限手を貸そうと思ってる、実際してるつもりなんだけどな。息子にやってもらうのが当然だという間違った前提に立っているから「あなたたちのためにやってあげてる」なんて発言になる。気分悪い。最悪だと思いました。

うっかり引き取ってしまいそうに

そんな母に嫁である私は怒り心頭で、毎日カッカしてたのだけれど、当の夫はひたすらドライでした。そして私は、６０年連れ添った夫に微塵の情も示さない母がほとほと嫌になり、途中で何度か「お父さん、私が看ようか」とか「こっちに介護施設探して、私が定期的に様子見に行こうか」などと夫に言ってしまいました。母の相手をしてこんなに疲れるくらいなら、全部自分でやっちゃった方が楽かも、と思ってしまったのです。危なかった・・。一時のそんな気の迷いが、この後何年、いえ、場合によっては10年とか20年とか、介護に縛られることになるんだな、と思う・・。

親を引き取りたくない。夫の強い意志

夫は、母のすがるような言葉の数々にも一切動じず、事に淡々とと当たり続けました。「オヤジをぜーーったい引き取りたくない」という意志は、嫁の私より実子の夫の方が数倍強かった。また母親に対しても「最大限のサポートはする。でもオヤジをこっちで引き取るという選択肢はないからね」と一貫して言い続けました。「この人、親に結構ドライなんだねぇ」と、意外な一面、というか、親に苦労させられてきたと言う夫の胸の内を初めて見た気も。しかしすべて終わってみれば、夫のしたことはすべて正しかった、と思います。

夫が何をしたのか、そしてどうなったのか。それは次で。続く

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